ChatGPTって何?使い方から得意・苦手分野までわかりやすく解説

現在の生成AIブームの発端となったのが、2022年11月に公開されたChatGPTである。

生成AIに関する話題は毎日のように耳にするが、結局のところ具体的にどんなことが出来るのか?何に役に立つのか?と疑問に思っている方もいるのではないだろうか。

場合によっては人間と区別が付かないほどの精度を誇る対話型AIであり、今後の情報技術に巨大な影響を及ぼすイノベーションとされながらも個人ユーザーでも簡単に活用できる敷居の低さが魅力のChatGPTである。

本記事ではChatGPTとは何か、どうすれば使えるようになるのかについて解説していこう。

そもそもChatGPTって何?

ChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAIが開発した生成AI(ジェネレーティブAI)による「対話型のチャットサービス」で、従来の人工知能から飛躍的に性能が向上し、人間を相手にするのと遜色ないレベルでの対話を行えるのが特徴だ。

2022年11月30日に「ChatGPT-3.5」がリリースされると世界的に注目を集め、さらに2023年3月15日にはより性能が向上した有料版の「ChatGPT-4」をリリースしている。

ChatGPTの登場により、GoogleやFacebookといった世界的企業が続々と独自の生成AIを発表、現在に至るまで熾烈なパフォーマンス競争を展開している。

ChatGPTが引き起こした生成AIブームは、社会や産業のあり方を根本から変えうる、近年最大のイノベーションと見なされている。

ChatGPTの仕組み

ChatGPTは、インターネット上で公開されている膨大なテキストデータを元に、統計的に適切と推測された言葉を組み合わせることで、文章を生成している。

ある言葉の次にどんな言葉が続く可能性が高いかを、ウェブの情報をベースに自然で文法的にも正しい言語表現を実現している。

さらに、明らかな誤情報や問題のある表現を防ぐために、人間の手による補正が加えられており、どんな質問に対しても、倫理・品質面で適切なアウトプットが可能である。

人間の記述のような思考の結果としての文章ではなく、確率論的に最適な言葉の組み合わせによる文章であるため、その表現はウェブ全体のテキストの平均の範囲内からはみ出ることはないが、その文章の品質は、あたかも人間を相手にしているようなレベルに到達している。

ChatGPTの重要ポイント「プロンプト」

ChatGPTを活用する上で欠かせないのが「プロンプト」である。

ChatGPTは質問を入力すると適切な応答を返してくれるが、単純な質問だと答えが漠然としていたり、的外れだったりすることが少なくない。

そこで応答を絞り込むために質問内容が厳密に定義された命令、プロンプトという考え方が登場した。

例えば「ドメインについて解説して」という質問をChatGPTに入力すると、ドメインに関する総論的な説明を得られますが、求めている解説とは方向性が異なる可能性がある。

そこで、次のようなプロンプトで質問を投げかける。

「私は企業のエンジニアです。ドメインについて1000字程度で解説してください。説明の相手はITには詳しくないので、専門用語を使わずに、ドメインを取得するメリット・デメリットを併記した上で、利点が上回るように記述してください」

このように、質問の条件を厳密に絞り込むことで、用途に合った出力を得やすくなる。

ChatGPTのプロンプトには様々な書き方があり、多くの書き方のサンプルが無料で公開されている。

ChatGPT Plusって何?無料版のChatGPT-3.5と有料版のChatGPT-4の違いは?

ChatGPTはユーザー登録を行えば誰でも利用できるが、無料で使えるのはChatGPT-3.5のみである。

更により高性能なChatGPT-4を使うには、有料版である「ChatGPT Plus」への登録が必須で、こちらは月額20ドルとなる。

ChatGPT-4はChatGPT-3.5よりも出力のクオリティにおいて上回るのはもちろんですが、それ以外にも次のような追加機能を備えている。

  • Webブラウジング機能に対応
    ChatGPT-4では、ウェブ上の情報の探索に対応しているため、ChatGPT-3.5が苦手とする最新の情報にも、ある程度の対応が可能になる。
  • 画像、音声などのマルチモーダル対応
    ChatGPT-4はマルチモーダルに対応し、文字情報だけでなく画像や動画による入力にも対応している。
    ただしこの機能は現時点では未実装で、将来的に導入される予定だ。
  • 公式・サードパーティのプラグイン対応
    ChatGPT-4はプラグインに対応しており、特定の用途に特化したAIへとカスタマイズすることができる。
    既に公式やサードパーティによるプラグインがリリースされている。

ChatGPTの得意分野と苦手分野

ChatGPTはこれまでのAIとは一線を画す性能を備えており、人間の作業を代替するポテンシャルを秘めているが、あらゆる用途において万能というわけではなく、特に後述するハルシネーションの問題は大きく、使い方を誤ると生産性の向上に寄与しないどころか、大きなトラブルを招く原因になりかねない。

ChatGPTが得意とする分野・苦手とする分野は次の通りである。

ChatGPTの得意分野

既存の文章の要約

すでにある文章を要約して短い文章へと置き換える作業は、ChatGPTのもっとも得意とするところである。
かなり長い文章であっても意味を保持したまま圧縮し、分かりやすい文章へと置き換えてくれる。

文章の校正

文章の校正もChatGPTの得意分野で、誤字脱字や、日本語表現のおかしな部分を見つけ出してくれる。

ただし、たまに見落としが発生することもあり、完璧な精度は期待できないのと、ChatGPTは一度に処理できるテキスト量に上限があるため、長い文章は小分けにして入力する必要がある。

企画、台本、キャッチコピーの叩き台作成

ChatGPTは文章表現の叩き台を作るのにも向いており、例えば企画や台本、キャッチコピーなどを作成する際に、ベースとなるアイディアを出力させて、それを膨らませるといった使い方が考えられる。

ただし、アイディア自体は極めて凡庸で、そのままでは全く使い物にならない点には留意が必要。

外国語の翻訳や文章作成

ChatGPTは外国語の翻訳にも対応しています。
オンラインの翻訳サービスはChatGPT以外にも数多くあるが、ChatGPTは文章の意図やニュアンスまで指定できるため、用途に応じて柔軟性に富んだ使い方ができるのが特徴だ。

コードの生成

ChatGPTは文章だけでなくプログラミング言語のコードの生成も行える。

複雑なコードの作成はできず、出力されたコードもある程度、手直しをしないと動かない場合がほとんどだが、シンプルなスクリプトやマクロ、正規表現を手間をかけずに生成したいといった用途には活用できる。

ChatGPTの苦手分野

最新情報の出力

ChatGPTは最新の情報への対応を苦手としている。

特にChatGPT-3.5は2021年9月以降に起きた出来事や変更があった事柄は、なかったこととして扱う特徴があり、ChatGPT-4はウェブからの情報取得に対応したことで若干は改善されたものの、それでも時事的な話題は正確性を欠くことが多々ある。

実在の人物、事件、作品、店舗の情報

ChatGPTは、実在の人物、事件、作品、店舗の情報をアウトプットする際に、誤情報が含まれる割合が多くなる。

これはハルシネーション(幻覚と呼ばれる現象で、ひどい場合には実態とは似ても似つかない、まるでデタラメの情報を、何の留保もなしに発信することから、ChatGPTの大きな欠点とされている。

独創的なアイディア

ChatGPTは、ウェブにある情報を統計的に分析し、次に来る確率の高い語を組み合わせることで、文章を生成している。
その仕組み上、ChatGPTが出力する情報は必然的にウェブにある情報の平均値となるため、アイディアや表現の品質としては、どこまでも凡庸の域を出ないため成果物の制作を任せられないのはもちろん、企画としてもそのまま使えるレベルには程遠く、人間による大幅な手直しは欠かせないだろう。

マイナーな情報の提供

ChatGPTはウェブから充分な情報を取得できない話題では、アウトプットの質が大幅に低下する。

特に学術的に高度な主題や専門性の問われる話題は、充分な説明がなされないだけでなく、ハルシネーションが発生する率も高く、場合によって出力された記述の全てがデタラメというケースもある。

ハルシネーションとは?

ChatGPTでは、ユーザーが入力した質問に対して、完全に間違った回答を返す現象が確認されている。これはChatGPTがまるで幻覚を見ているようであることからハルシネーション(Hallucination)と呼ばれている。

ハルシネーションは、事実とは全く異なる嘘を、あたかも真実であるかのように発信し、さらにそれは何の留保もなく他の正しい情報と混在している。初期段階からChatGPTの活用を阻む大きな欠陥とされ、度重なる修正によって現在ではかなりの改善が見られたが、それでも完全になくするまでには至っていない。

例えば王貞治に関する質問で、所属チームを読売ジャイアンツではなく、阪神タイガースと答えることが話題になった(現在では修正済み)。

これは上述したハルシネーション(幻視)の典型例だが、厄介なのは、それ以外のプロフィールが正確なことで、正しい情報の中に突然、誤情報が紛れ込むことがあることだ。

ChatGPTは当初からこの問題を重く見ており、アップデートを重ねたことで、完全に間違った文章が出力されることはほとんどなくなったが、それでも完全に排除するには至っておらず、事前に予測したり予防することもできない。

ChatGPTの利用の際には、ハルシネーションの発生を前提として、人間の目視による校正を欠かさないようにしよう。

ChatGPTと既存のチャットボットの違いって?

ChatGPT以前にも人工知能は存在しましたが、ChatGPTはそれらとは次元の異なる性能を発揮するところに特徴がある。

ChatGPTが既存のチャットボットと異なる点として挙げられるのは、次の3点である。

人間と遜色ない会話能力

ChatGPTのもっとも特徴的な機能は、人間とほとんど見分けがつかない会話能力である。

ChatGPTでは通常の会話はもちろん、しりとり、大喜利、ブレスト、論争など人間同士で可能なあらゆるコミュニケーションを模倣可能で、口調や論調、シチュエーションを指定することもできる。

人工知能の人間性を試す基準としてチューリングテスト、つまり人間と区別できない会話能力を持つか否かがよく挙げられるが、ChatGPTの会話力は、まさにその要件を満たしていると言えるだろう。

テキストの完成度の高さ

ChatGPTが生成する文法的な破綻のない文章作成も、従来のAIとの大きな違いです。

ChatGPTの文章では、既存のAIにあったような違和感のある語句の選択、文法的な破綻といった問題がありません。
人間が読んで違和感のない、完璧な言語表現を実現したことで、活用が期待される領域が大きく広がりました。

あらゆるジャンルの情報をフォロー

ChatGPTはインターネットを情報源にしているため、ネット上に存在する話題であればジャンルを問わないのも特徴だ。

主要な言語はすべて扱えるほか、プログラミング言語のソースコードの出力も可能と、テキスト形式の情報であれば、どんなものにでも対応する。

ただし、ネット上に統計的に扱えるほどの充分な情報量が存在しない話題を問われると、回答を回避したり誤情報を発信する、いわゆるハルシネーションを引き起こすのは前述した通りである。

ChatGPT活用事例

メッセージの自動応答(anybot for ChatGPT)

ChatGPTの対話機能は、チャットツールのメッセージの応答に活用可能である。

特に導入が進んでいるのがLINEで、「anybot for ChatGPT」を導入すれば、ChatGPTに情報を組み込み、LINEを通じてサポート業務を代行させることが可能であり、これまでのサポートセンターで人間が行ってきた対応を置き換えるサービスである。

英会話のトレーニング(SPEAK)

英会話アプリの「SPEAK」では、ChatGPTを英会話のトレーニングに利用するサービスを開始している。

ChatGPTでは、イレギュラーな言葉を投げかけても何かしらの反応があり、実際に人間を相手にしているかのような学習体験が得られる。

知らない人との英会話に抵抗がある人でも、AI相手であれば遠慮せずに話ができるのも利点である。

Twitterの運用(TwitterRobot)

ChatGPTをTwitterの自動運用に利用するサービスも始まっている。

「TwitterRobot」はTwitterのツイート文やダイレクトメッセージを自動的に生成して投稿できるだけでなく、条件に合致したツイートに「いいね」を自動で付けるなどの機能にも対応している。

記事執筆のサポート(note)

メディアプラットフォームの「note」もいち早くChatGPTを導入したサービスのひとつだ。

noteでは記事の提案や書き出しについて、ChatGPTによるサポートを受けられるほか、表現の改善や簡略化、さらに読みやすくするための改善の提案などを行ってくれる。

おすすめのドメインを紹介(お名前.com)

「お名前.com」でも、AIを利用したサービスを提供している。

ドメインの分野、用途、ドメインに含めたい文字列を設定してAIに訪ねると、おすすめのドメインを紹介してくれる。
欲しいドメインがなかった場合や、そもそも文字列を迷っている場合に是非利用してみよう。

ChatGPTの関連サービス4つ

ChatGPTは当初、ブラウザベースのオンラインサービスとして公開されていたが、現在では様々なプラットフォームへの展開が始まっている。

ChatGPTを組み込んだサービスとして挙げられる主なものは次の4つです。

Bing

ChatGPTはMicrosoftが出資しているため、Microsoftが提供している検索サービス「Bing」には、いち早く組み込まれている。

Bingでは検索結果に、既存の検索エンジンの出力結果と並行して、ChatGPT-3.5のカスタマイズ版の回答が表示される。

ChatGPTスマホアプリ版

ChatGPTはスマホアプリとしても提供されている。

iOSとAndroidのアプリでは、オンライン版と同様のインタフェースでテキストの入力、生成が行えるのはもちろんだが、さらに音声入力にも対応しているのが特徴だ。

Microsoft 365 Copilot

ChatGPTの出資元のMicrosoftの主力製品であるOfficeシリーズにもChatGPTは組み込まれている。

ChatGPT搭載のOfficeは「Microsoft 365 Copilot」としてリリースされ、WordやExcel、PowerPoint、OutlookなどでメニューからChatGPTを呼び出し、文面や数式、スライドの生成をサポートしてくれる。

現在はアーリーアクセスプログラムとして一部のユーザーのみ利用可能ですが、まもなく追加機能として月額30ドルで一般に提供される見通しだ。

GitHub Copilot

ソフトウェア開発のプラットフォーム「GitHub」にもChatGPTが導入されている。

日本語で指示を出すことでコードを生成したり、作成したコードの修正や提案を行うことが可能である。

GitHub上で利用するだけでなく、GitHubと連携した「VS Code」などのコーディング用のエディタに拡張機能としての導入も可能だ。

まとめ

人工知能は長年、研究が進められてきましたが、ChatGPTはその性能の劇的な向上をもたらした、巨大なブレイクスルーの立役者として注目を集めている。

当初は、生成される文章の完成度の高さや、受け答えの妙が話題になっていたが、その後はアプリやソフトに組み込まれ、バックグラウンドで私たちの作業を補助し、生産性を高める役割にシフトしつつある。

とはいえ、現在においてもChatGPTは万能のAIとは言い難く、その性能を引き出すには、ChatGPTの特徴をよく知っておく必要があるだろう。

この記事で、ChatGPTができること・できないことを頭に入れて、AIを適切に活用できるようになろう。