IT初心者でも大丈夫!まずチェックしたい6つの業務
「IT初心者なのに社内のIT担当者に任命されてしまった」
「前任のIT担当者が突然退職してしまった」
この記事をご覧いただいている方で、こんな状況でお困りの方はいないだろうか。
人員不足などの理由から中小企業のIT担当者は他業務との兼任が多く、ITに詳しくないにも関わらず担当者となるケースもある。
本記事ではIT担当者の「企業活動を停止させないための業務」5つ、「生産性を向上させるための取り組み」1つの計6つの業務をご紹介し、その業務の概要と手法を解説する。
そもそもIT担当者の仕事とは?
まず、IT担当者の仕事を整理してみよう。今回はIT担当者の仕事を大きく「企業活動を停止させないための業務」と「生産性を向上させるための取り組み」の2つに分け、さらに6つの業務に分類した。
企業活動を停止させないための業務
パソコン・インターネット・印刷など、日々の業務でIT/OA機器の利用は当たり前になった。それらの機器が毎日まったくトラブルを起こさない、ということは難しいだろう。
また、サイバー攻撃に遭って業務に必要なデータを失ってしまうと、仕事が止まる・売上が落ちる・取引先に迷惑をかけてしまう、といった事態も起こりうる。
このように、IT/OA機器の保守・管理、トラブル対応、そしてセキュリティ対策は「企業活動を停止させないための業務」と言える。
この記事では「企業活動を停止させないための業務」を、さらに5つの業務に整理して解説してゆく。
- 業務1:ヘルプデスク・障害対応
- 業務2:パソコン入れ替え業務
- 業務3:IT資産管理
- 業務4:ベンダーとのやり取り
- 業務5:セキュリティ対策
生産性を向上させるための取り組み
社会全体でデジタル化が推進される中、中小企業のデジタル化・DXも注目されている。
デジタル化やDXはただの流行り言葉ではなく、デジタルを活用することで業務を効率化し、生産性を向上させれば、売上や企業価値の向上にもつながる。
企業の競争力にもつながるもので、今や経営課題の一つにも挙げられるのではないだろうか。
この「生産性を向上させるための取り組み」を、デジタル化の視点からIT担当者の業務の1つとして解説する。
- 業務6:デジタル化による生産性向上
ではここから、6つの各業務について詳細をご紹介していこう。
IT担当者の6つの業務
業務1・ヘルプデスク・障害対応
パソコンが動かなくなった、ネットにつながらなくなった、印刷ができない…
このようなオフィスによくあるITトラブルに対応するのがIT担当者の業務の1つである。
一方で、兼任担当者の場合、社内のITトラブル対応で本業に集中できないといった状況は避けたいし、当事者も早く解決してほしい、と思うだろう。
このようなヘルプデスク・障害対応業務の効率化の方法としては
- マニュアル・FAQを作成する
- 役立つサイトの活用
- IT担当者に一極集中させない
- 基本的な社員教育を進める
- アウトソーシング(外注)する
- 障害対応の流れを把握する(記録、復旧、業者への連絡)
ヘルプデスク業務の効率化には、情報共有や社員教育を進め、社員が自己解決できる体制を整えることがおすすめだ。また、ITトラブル対応の外部サービスも増えているので、そのようなサービスの導入も検討してみよう。
障害対応は、記録を残しておくことが大切です。その上で復旧を試み、社内で解決ができない場合は業者に連絡するというフローになります。
業務2:パソコン入れ替え業務
業界・職種によって異なるが、一人一台パソコンを利用するケースが多くなった。古くなった複数のパソコンを一斉に入れ替える、社員の入退社に伴って購入や廃棄をする、といった作業が必要になる。
このような、会社にある複数のパソコンの入れ替えもIT担当者業務の一つとして挙げられる。
パソコンの入れ替え業務には、「調達」、「導入」、「運用・管理」、「消去・廃棄」の4つがあります。この中で、「調達」、「導入」について解説する。
<調達>
パソコンの選び方:
一般事務用の場合、ノートパソコンがおすすめだ。持ち運びがしやすく、場所をとらないため物理的にも管理もしやすいのが特徴である。デスクトップパソコンにくらべると性能が落ちますが、事務用途には十分なスペックのものが普及している。
一方、システム開発やクリエイティブ職の方は、パソコンの性能が生産性に直結する。できるだけ利用者の要望に応えたスペックのパソコンの用意がおすすめだ。
調達の方法:
調達の方法には「購入」、「リース」、「レンタル」がある。
購入は、長期的にコスト面でメリットがある。リースやレンタルは、利用期間に制限があるが、保守や管理を代行してもらえるサービスが便利だ。それぞれのメリット、デメリットを比較して選択しよう。
<導入(キッティング)>
導入とは、調達したパソコンを業務で使える状態にすることであり、キッティングと呼ばれる。主に次のような流れで行う。
例)キッティング作業の流れ
- パソコンの開梱
- 通電・起動確認、キーボードやマウスの接続確認
- BIOSセットアップ、OSインストール、初期セットアップやアカウント設定
- 社内ネットワークへの接続
- アプリケーションのインストール、ライセンス認証
- ウイルス対策ソフトのインストール
- OS・アプリケーションの動作確認
- 管理番号ラベルの貼り付け、台帳への記入
作業量が膨大な場合や、技術的な自信がない場合などは、キッティングサービスの利用もおすすめだ。
業務3:IT資産管理
IT資産管理とは、ハードウエア、ソフトウエア、周辺機器、記憶媒体、そしてインフラなど、社内にある「IT資産」を管理することである。
IT資産が正しく(不正なく)利用されているか、セキュリティ上の懸念がないか、といったコンプライアンスやセキュリティ強化のために、重要な業務の一つだ。
- アカウント管理(ID・パスワード管理)
- アップデート管理
- ライセンス管理
- ネットワーク管理
上記は管理の対象例である。
中小企業の場合、Excelの台帳で管理するケースが多く見られる。なお、アップデート管理については「IT資産管理クラウド」といった専用のツールもある。
業務4:ベンダー(外部業者)とのやり取り
デジタル化が進むと、新しいIT/OA機器やシステムの導入の機会が増えてくる。
依頼するベンダー(外部業者)を選び、導入後も保守やサポートのためにベンダーとやり取りをするのは、IT担当者の業務の一つである。
ベンダー選びのポイントとしては次の4点である。
- 価格
- 導入・運用時の役割分担
- サポート体制・サポート範囲
- 組織・担当者
価格については、2社以上から見積もりをもらい、比較するのがおすすめだ。また、契約や見積もりの内訳はしっかり確認し、導入後のトラブルを防ごう。
また、その会社のことを調べたり、密なコミュニケーションを取ったりするなど、IT担当者がしっかり情報収集し、信頼できる業者かの判断が必要になる。
業務5:セキュリティ対策
サイバー攻撃の手口は年々巧妙化し、企業も常に情報収集と対策を求められている。
攻撃の対象は大企業に限られたものではなく、中小企業もターゲットだ。業務のデータを失えば企業活動が停止し、取引先の業務を停止させる危険性もあり、個人情報を流失させることで社会的信用を失うなど、その損害は計り知れない。
IT担当者の仕事として、セキュリティ対策は重要な柱の一つである。
少なくとも次のようなポイントで、自社のセキュリティ体制について情報収集と対策を進めることをおすすめする。
- パスワード管理
- アップデート
- ウイルス対策
- バックアップ
- 多層防御
- よくある攻撃手口の理解
業務6:デジタル化による生産性向上
最後は、デジタルの活用により、生産性を向上させる業務である。
自社の成長につながる業務であり、業務1~5に挙げた「企業活動を停止させないための業務」を進めつつ、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい業務である。
<デジタル化ステップ>
- ありたい姿(ゴール)を考える
- 課題の整理
- 情報収集
- 外部への相談
- 定着・最適化
デジタル化、と言っても、何から始めてよいのか分からない方も多いだろう。その場合、ゴールの設定をし、その後に自社の課題の整理を始めることをおすすめする。
時間や手間がかかっている業務=効率化したい業務を洗い出し、その中でデジタルによって効率化が図れるものについて情報収集し、場合によってはベンダー(外部)に相談し、導入まで進める。
実際に導入した後は、社内での定着、さらによいものへの最適化も重要なプロセスだ。
<おすすめのデジタル化ポイント>
- 共有ストレージ(NAS、クラウドストレージ)
- スマートフォン(スマートフォン+クラウド)
- 押印のデジタル化(ビジネスチャットで承認)
- 業務効率化ツールの導入(労務管理、経理、予定管理など)
- コミュニケーションのデジタル化(ビジネスチャット、スケジュール共有など)
デジタル化において、大切なのは手段やツールではなく、目的や目標だ。自社のデジタル化のゴールを見据えつつも、ツール活用の実例から、施策のヒントを見つけてみるのもおすすめだ。
<課題と対策>
デジタル化を推進するにあたり、社内の承認やコストなどの課題を抱える中小企業は少なくない。
助成金の活用、他社事例などの情報収集など、課題ごとに対策は異なるが、デジタル化を支援しているベンダーへの相談もおすすめだ。
まとめ
中小企業は、人員不足や投資の難しさから、IT専門の部署はもちろん専任担当者がおらず、人事や総務、経理などとの兼任しているケースも珍しくない。
このような状況が長く続いてきたが、コロナ禍やデジタル化推進の流れの中、中小企業のIT業務の重要性が見直され始めている。専任担当者の採用が難しい場合でも、IT関連業務の理解、整理、改善は自社のデジタル化推進に役立つ作業である。参考になれば幸いだ。