ChatGPTo-1に匹敵する⁉中国版AI「DeepSeek-R1」とは?

DeepSeek-R1は、AI開発企業の中国DeepSeek社が1月に公開したAIモデルである。その性能の高さに加え、同等の性能を持つAIモデルに比べ、開発コストを大幅に削減したとして注目を集めた。これにより、AIの計算資源であるGPU開発大手の米NVIDIAの株価が一時大きく下落するなど、「Deepseekショック」と呼ばれる影響をもたらした。

AI業界で新たな注目を集めているのが「DeepSeek-R1」という推論能力に特化した高性能な大規模言語モデルである。中国のAI企業DeepSeek社が開発したAIモデルで、OpenAIのo1モデルと同等の性能を持ちながら、オープンソースで公開され、低価格で提供されている。 

本記事では、DeepSeek-R1の概要や利用方法、料金体系、注意点まで詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧いただきたい。

中国産AIモデルDeepSeek-R1」とは

DeepSeek-R1は、中国のAI企業DeepSeekが開発した大規模言語モデルである。開発元のDeepSeek社は、高性能なAIモデルの開発を手がける新興企業として知られているが、モデルの開発過程は非常にユニークだ。まず、DeepSeek-V3という基本モデルをベースに「DeepSeek-R1-Zero」というモデルが開発された。DeepSeek-R1-Zeroは、通常のAI開発で用いられる教師あり学習を一切行わず、強化学習のみで開発された実験的なモデルだった。 

強化学習とは、AIが試行錯誤を繰り返しながら、よりよい結果を導き出す方法を学んでいく学習方法であり、例えば、チェスのAIが対戦を重ねて上手くなっていくように、DeepSeek-R1-Zeroも問題解決を繰り返すことで、高度な推論能力を獲得していった。 

高い推論能力を維持しながら、低コストで利用できる次世代のAIモデルとして世界中から注目を集めているDeepSeek-R1には、以下のような特徴がある。

高度な推論能力 

DeepSeek-R1は数学やプログラミングなどの分野で、特に高い性能を発揮する。例えば、アメリカの難関数学試験AIMEでは79.8%の正答率を達成し、OpenAI o1と同等の成績を収めている。 

また、プログラミングの実力を測るCodeforces では「2029」というプロフェッショナルレベルの評価を獲得、一般的な知識を問うMMLUテストでも90.8%という高スコアを記録している。 

軽量モデルの提供

DeepSeek-R1の技術を活用した「DeepSeek-R1-Distill」という軽量モデルも提供されている。 

1.5B、7B、8B、14B、32B、70Bなど、さまざまなサイズのモデルが用意されており、用途や環境に応じて選択可能だ。また、32BモデルはOpenAI o1-miniを上回る性能を示している。 

DeepSeek-R1の料金体系は?

DeepSeek-R1は、Webチャット版を通じた無料利用と、API利用の2つの方法で提供されている。 無料で利用できるWebチャット版は公式サイト(chat.deepseek.com)にアクセスし、アカウントを作成すれば、無料でDeepSeek-R1の機能を試すことができる。アカウントの作成は、Googleアカウントまたは、電話番号orメールアドレスで登録可能だ。有料のAPI利用版では、入力と出力のトークン数に応じた従量課金制を採用している。

種類 条件 料金(100万トークンあたり) 
入力トークン キャッシュヒット時 0.14ドル 
入力トークン キャッシュミス時 0.55ドル 
出力トークン ― 2.19ドル 

※キャッシュヒット=同じような質問や処理が過去にあり、保存された情報を使用できる状態 
※キャッシュミス=新しい質問や処理で、一から計算や処理を行う必要がある状態 

DeepSeek-R1のAPI料金体系の最大の特徴は、競合他社と比較して大幅に安価な点だ。特に、キャッシュヒット時の入力トークン料金は0.14ドルと非常に低価格に設定されているが、これはカスタマーサポートの自動応答や定型的なデータ処理など、同じような質問や処理を繰り返し行う用途に適している。 

ただし、出力トークンの料金は入力と比べてやや高めに設定されているため、大量の文章生成を行う場合は注意が必要だ。効率的な利用のためには、プロンプトの最適化や出力の制限など、適切な運用方針を設定することをおすすめする。 

DeepSeek-R1利用時の注意点は?

DeepSeek-R1は非常に高性能なAIモデルですが、利用時にいくつか注意点がある。DeepSeekは中国企業が運営しており、以下の特徴がある。 

・データは中国国内のサーバーに保管 

・中国の法律に基づいてデータが取り扱われる

・日本の個人情報保護法が適用されない可能性がある 

データセキュリティの観点から、機密性の高い情報や個人情報の入力は避けることをおすすめする。特にビジネスでの利用時は、社内のセキュリティポリシーに照らし合わせて、利用可能な範囲を明確にしておく必要があるだろう。 

また、利用規約によるとDeepSeek社は、ユーザーの入力データや生成された出力は中国国内のサーバーに保管され、確認・保存する権限を持っており、中国の法律に基づいて取り扱われる。日本の個人情報保護法が適用されない可能性がある。アカウントを削除しても、法的な要請があれば一定期間データが保持される可能性があるだろう。プライバシーを重視する場合は、個人を特定できる情報の入力を控えめにすることが賢明だ。 

また、DeepSeek-R1は、中国企業特有の制限として、特定の政治的なトピックに関する質問への回答が制限されている。このような制限は、事前に理解しておくことで、業務での利用時に予期せぬエラーを避けることができる。 

また、DeepSeekは、損害に対する一切の責任を負わず、サービスの保証も行わないため、利用者が規約違反や違法行為を行った場合、損害を補償する義務を負う可能性がある。

また、日本語の処理は英語や中国語と比べてやや弱い。もちろん日本語での利用も可能だが、より複雑な質問や専門的な内容の場合は、英語で入力し、得られた回答を日本語に変換する方法が効果的だろう。 

このように、DeepSeek-R1は、OpenAIのo1モデルと同等の性能を持ちながら、オープンソースで提供され、低価格で利用できる画期的なAIモデルである。特に数学的推論やコーディングの分野で高い性能を発揮し、教育現場やソフトウェア開発などでの活用が期待されている一方で、中国企業による運営という特性から、データセキュリティや利用規約には十分な注意が必要である。 

DeepSeek-R1の利用を検討されている方は、まずは無料で利用できるWebチャット版から試してみることをおすすめする。ただし、ビジネスでの本格的な導入を検討する場合は、本記事で解説した注意点を十分に確認したうえで判断していただきたい。